リアルタイム移住日誌

神奈川県から長野県の安曇野へ移住した、“ちょっと理屈っぽい筆者”のリアルタイムな移住記録。

世にも奇妙な作曲家

作曲家のエリック・サティ(1866-1925)は、曲に不思議なタイトルを付ける。

「干からびた胎児」や「官僚的なソナチネ」、極めつけは「いつも片目を開けて眠る見事に太った猿の王様を目覚めさせるためのファンファーレ

曲を聴いても、どの辺りが“片目を開けて眠る見事に太った猿の王様”なのか見当がつかない。気取ったクラシック音楽への皮肉か、単なる諧謔とも思えなくもない。

 

そんなサティの思考に迫るべく『卵のように軽やかに』(ちくま文庫)を手に取った。

エッセイや詩、戯曲など、生前サティの書いた文章が集められている。

読むと狐につままれたような気分になる。

戯曲もマルクス兄弟の映画*1を彷彿とさせるアナーキーな内容。

訳者のあとがきによると、サティは生涯独身で、犬を除いては誰ひとり部屋に通さなかったそうだ。死後、弟や作曲家らが遺品整理のため部屋に入ると、未使用の傘が百本くらいあったとか。

ますます謎である。

当時も困惑する聴衆を尻目に「わからんでしょうな。ふぉふぉふぉ」と、ほくそ笑んでいたかもしれない。

分からないけれど、なんだか楽しいサティである。天晴れ!

 

 

 

*1:サイレント期に人気を博したアメリカのコメディアン。映画「我輩はカモである(原題:Duck Soup)」はかなり笑える。ちなみに、経済学者のカール・マルクスとは関係ない。念のため