これから「地元経済」の話をしよう
対談形式の本が好きだ。
ただ両者が知識を披露したり、意見を述べたりするのではなく、互いの考えや意見を擦り合わせていく過程が読んでいて清々しい。
『しなやかな日本列島のつくりかた』(藻谷浩介著、新潮社)は、『里山資本主義』の著者による対話集。
商店街、限界集落、観光、まちづくりなど多岐にわたるテーマを各分野の識者と論じている。
中でも興味深いのは、山田桂一郎氏(地域経営プランナー)との観光についての対談。
山田氏はスイス、マッターホルンの麓の町で観光事業者として活躍している。
アクセスは悪く、物価も高いこの土地での成功の秘訣を語る。
観光において重要なのは、顧客満足度とリピート率。
そのためには、特産品やサービスを安売りするのではなく、本当に質の良いものを提供すること。ターゲットは、時間とお金のある富裕層。
B級グルメ、単発イベント、ゆるキャラなどに安易に飛び付くと地域振興は失敗するという。
山田氏:そもそも、A級品がないところにB級品は存在できないのに、いきなりBだけ作るから話がおかしくなるんです。宿泊も食事も、まずはその地域で一番と言えるものを提供できるようにするべきです。チープなものを作るのはその後でいい。(P93)
富裕層しか相手にしないというと高飛車な感じがするけれど、A級なくしてB級なしというのは納得。
「とっておきの何か」があれば、わざわざ求めに足を運ぶ人もいるにちがいない。
たとえば、その土地にしかない、その時期にしか食べられないとっておきの食材を、手間暇かけて調理して、最高のおもてなしで、その価値に見合った価格で提供する。
気に入ればまた訪れたくなる。
特産品にしてもサービスにしても、「とっておきの何か」を提供するのは簡単ではないが、考える余地は大いにありそうだ。