社会の抜け道
行き過ぎた資本主義やグローバリズムに疑問を持ちながらも、どうやってこの社会で生きていけばよいのだろう?
そんな問いへのヒントが詰まった本がある。
『社会の抜け道』(小学館、2013)は、いまを時めく哲学者、國分功一郎氏*1と若者研究で知られる社会学者、古市憲寿氏*2の対談集。
タイトルの“社会の抜け道”とは、消費社会やグローバリズムといったイデオロギーにおけるオルタナティブな選択肢を指す。
古市氏は、前書きでこう書いている。
たとえ都会のど真ん中でも、資本主義のただ中にいても、人はただの操り人形ではない。そこで、僕たちは自分たちなりの社会の使い方を見つけることができる。(P7)
両氏とも、革命による劇的な変化ではなく、身近なところからできる社会の変革を唱えている。
何か革命的なものによって消費社会や資本主義が終了して、新しい社会になるなんてありえない。いまある経済システムは残るけれど、そこに新しい経済の在り方が上書きされていく、そういう形でしかシステムの変更は考えられないと思う。(國分氏)(P58)
自給自足の生活を実践しているコミュニティについて語っている章が興味深い。
このコミュニティの人々は、反資本主義を主張するために自給自足を行っているのではない。社会変革を目指しているわけでもない。有機農業それ自体に楽しみを見出だしている。だからこそ継続できる。
以前、このブログで紹介した非電化工房の藤村靖之氏も著書に書いていたが、“人は正しいことが好きなのではなく楽しいことが好き”なのだ。
楽しみながらやるというのは、今後の大きなキーワードだと思う。
声高に政治や社会の在り方を批判してもあまり意味が無い。
大きなことはできないけれど、自分にできる範囲で善いことを楽しみながら行う。
場合によっては、同調する人たちが現れて、それが大きな流れとなって社会の変革につながるのかもしれない。
いまの時代をどう生きるか。示唆に富んだ一冊だ。