長野でWWOOF④ まとめ
WWOOFで長野に出発した日の朝、駅に向かう途中で自転車とぶつかりそうになった。
自転車に乗っていた30代くらいの男に「危ねぇんだよ、馬鹿野郎っ!」と怒鳴られた。
ドラマか何かでありそうな場面だが、現実にこういうことを言える人がいるのかと唖然とした。
すぐに忘れようとしたが、心がざわざわと波立ち始めた。
長野に向かうバスの中でも、不意にその時の場面が頭をよぎった。
農場での生活では、街で感じるようなノイズが少ないように感じられた。
ここでいうノイズとは心を乱す雑念のようなもの。
自然が美しいからか、家の雰囲気が温かいからか、不思議と心が静かだった。
地方に行けばストレスから無縁だなんて思わないけれど、都会とは違う時間の流れを感じた。
しかし、実際に住むとなるとどうだろう。
長く厳しい冬をどう過ごすか。
住んでいれば体は慣れるかもしれないが、精神的にもけっこう堪える気がする。
車に乗らなければどこにも行けない。*1
10分に1本の列車。ちょっと歩けばお店があって何でも手に入る。そんな生活に慣れてしまった自分が果たして暮らしていけるだろうか。
安曇野で10日間過ごしたが、実際のところ、住んでみないと分からないというのが正直な感想だ。
頭の中では、都会の生活から離れて、自然の近くで暮らしをしたい、と考えているけれど、移住へのステップが進むにつれて現実的な不安も増してくる。
今だに町の生活に執着があるのかもしれない。
興味深かったのは、決して便利とは言えない場所にもかかわらず、たくさんの人が集まってくるという点。
お世話になったホストの家はかなりグローバルなことになっていた。知識や情報、文化や複数の言語が行き交っていて、刺激的でとても楽しい。
地理的なつながりだけでなく、ソーシャルネットワークを通じてつながるコミュニティ。ちょっと前まではありえなかったであろうことが現在では可能になっている。
やり方しだいでは地方はどんどん面白くなると思う。
WWOOFでの滞在中に、記事で紹介した人以外にもたくさんの人に出会った。
魅力的な生き方をしている人ばかりだった。
東京で働いていた時は、こういう多様な生き方があるとは考えもしなかった。
たくさんの出会いが今回の旅の最大の収穫である。
10日間はあっという間に過ぎた。みんな家族のように接してくれた。
別れるのが名残惜しい。最後の夕食は長野県産のワインで出発を祝ってくれた。
「またいつでも遊びにおいで!」と送り出してくれた。
「おぐらやま農場」の皆さま、素晴らしい時間をありがとうございました!
*1:筆者は筋金入りのペーパードライバー